2008年7月21日月曜日
101: 論文捏造
論文捏造
村松 秀
2006
今日は、村松 秀さんの『論文捏造』をご紹介します。村松さんは超伝導に関する至上空前の捏造事件をNHKのドキュメンタリーとしてまとめられたそうです。どのような事件なのか?、なぜ捏造が起こったのか?、どうしたら捏造を防げるのか?を学ぶために、この本を読みました。
【目次】
はじめに
プロローグ
第1章 伝説の誕生
第2章 カリスマを信じた人々
第3章 スター科学者の光と影
第4章 なぜ告発できなかったのか—担保されない「正しさ」
第5章 そのとき、バトログは—研究リーダーの苦悶
第6章 それでもシェーンは正しい?—変質した「科学の殿堂」
第7章 発覚
第8章 残された謎
第9章 夢の終わりに
エピローグ
放送歴・受賞歴・番組スタッフ一覧
【注目の3ポイント】
《1.どのような事件なのか?》
若きドイツ人物理学者であるヤン・ヘンドリック・シェーンがベル研で引き起こした史上空前規模の論文捏造事件です。3年間に16もの論文が捏造され、その中には科学雑誌の最高峰である「サイエンス」や「ネイチャー」も含まれていました。
シェーンは超伝導について研究をしていました。たとえば超伝導状態では、電気抵抗が全くないため、電気エネルギーをロスすることなく世界中に送ることも可能になるそうです。そのため、社会的にも非常に関心の高い学問分野の一つだということです。
《2.なぜ捏造が起こったのか?》
ベル研を取り巻く財政的事情、専門性の高い最先端の研究領域、論文の共著者のネームバリュー、シェーンの人柄、科学雑誌の話題性の高い研究への依存、チームリーダーのバトログの思惑など原因は、複雑に絡み合い多くの捏造につながっていったそうです。
《3.どうしたら捏造は防げるのか?》
シェーンの不正は大学から始まっていたそうです。したがって、学生には、これまで以上に科学的なリテラシーとともに倫理を伝える必要があると思います。それと同時に、日々の実験生活から結果の信憑性を議論し合う必要があると思いました。
また、パドログを含め論文の共著者となった共同研究者の多くは、シェーンの実験や生データを見たことがなかったそうです。これからは、こうした確認の時間も十分にとる必要があると思いました。
【読書後の感想ひとこと】
バトログの著者への感謝の念が記されているとおり、ジャーナリストとして、非常に客観的かつ真相に踏み込んだレポートになっていました。科学界の事件を追跡した良書ですので、おススメします。
【読みたくなった本】
■ ウイリアム・ブロード,ニコラス・ウェイド,牧野賢治 背信の科学者たち 論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか 2006
■ 李成柱,淵弘 国家を騙した科学者 「ES細胞」論文捏造事件の真相 2006
■ 米国科学アカデミー,池内 了 科学者をめざす君たちへ—科学者の責任ある行動とは 1996
■ 山崎 茂明 科学者の不正行為—捏造・偽造・盗用 2002
【今日の折り目】
25折/333ページ
・・・赤ペンチェックが入ったページ数を示しています。本の興味度を定量化しています。
【満足度】
5
(指標の目安)
5:とてもおすすめ,何度も読みたい
4:いい本
3:ふつう
2:う〜んちょっと
1:あんまりおすすめできません
【読書カウンター】
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★★★★★ ★★★☆☆
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今月は、あと9冊!
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2 件のコメント:
論文捏造などの研究不正は増えるばかりだな。
http://blog.goo.ne.jp/netsuzou
コメントありがとうございます。
残念ですが、増えるばかりですね。
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