2008年6月10日火曜日

66: 段取り力


段取り力―「うまくいく人」はここがちがう

齋藤 孝

2003

 今日は、随分前に買った斎藤 孝先生の『段取り力』を読みました。仕事を早く終わらせるためだけでなく、いい仕事をするために、この本から学びました。

 プロローグで斎藤先生は、一握りの天才や芸術家を除けば、大多数の人々には大きな才能や能力に差はなく、段取りの善し悪しで成果が変わってきていることを指摘しています。つまり、何かがうまくいかなかったときに、能力や才能がないからと片づけてしまったら、上達の道は閉ざされますが、段取りが悪かったからだと考えれば、改善の道が開けるということです。

 このように、「段取りを上手くすれば、出来るのだ」と考えることが大切で、できなかった事も、自分の得意な事をやるための“段取り”を転用することで、できるようになりうるのだと述べられています。

 また、“段取り”といえば、“マニュアル”が引き合いに出されますね。これについても言及されていて、マニュアル通りにしか動けなくなると問題だが、マニュアルが出来上がった背景を掴み取ること、あるいは自分でマニュアルを作り出していくことは、非常に重要なのだそうです。これは、私も同感です。レバレッジ本の本田さんの“仕組み化”や、10倍本の勝間さんの“ベスト・プラックティス”は、まさにこの“段取り”と“マニュアル”が背景にあると考えます(*1,*2)。


【目次】

 プロローグ
 第一章 生産性の高いプロの「段取り力」
 第二章 トラブルに強いタフな「段取り力」
 第三章 実践編・ケース別「段取り力」
 第四章 「段取り力」とは何か
 第五章 「段取り力」の鍛え方
 エピローグ


【注目の3ポイント】

《1.トヨタ式発想:納期が決まれば無駄はなくなる》

 企業では、自分の年収の3倍の利益をあげなければ、雇っている意味がないと言われるそうです。したがって、付加価値を生まない作業は無駄と認識してトヨタは改善を図ったのだそうです。

 斎藤先生は、トヨタの納期主義が文章を書くことにもあてはまると言います。つまり、論文を書く時にも、新しい価値が生まれる所にエネルギーを注ぐべきであり、価値を生まない下準備のところでいくら頑張っても結果には反映されないことを心に留めておくべきだということです。こうすることによって、クリエイティブな論文を作ることができるのだそうです。

 納期という考え方の重要性について引用しておきます。

 いつまでに終わらせなければいけない、という期限なしには改善は難しい。納期があることで初めて他のことでも無駄を減らし、ブラッシュアップしていくことができるのだ。

 納期とは時間制限だ。時間制限がない作業において段取りがよくなるはずはない。まずは上手な時間制限を設けるのが、段取りを組むための段取りである。

《2.安藤 忠雄に学ぶ“段取り力”》

 尊敬する建築家の1人である、安藤さんのエピソードが紹介されています。安藤さんは、1日15時間ひたすら歩き続けながら、建築について考えていたという世界旅行をされていたことは、有名です。安藤さんのインタビューで述べていることを引用します。

「建築を頭で考えるトレーニングが、この厳しい旅で可能になり、今も私の大切な能力になっている。建築は本のように、読み取れる人だけが本当にわかる。それができなければならないのです。」

 安藤さんの具体的な“段取り法”が3点あげられています。イメージを描く必要性は、伊藤さんも『ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ』で言及されていました。

  1.現場に行って、調べる
  2.最終ビジョンを明確に描く
  3.素材を限定することで創造性をかきたてる

 
《3.「段取り力」の鍛え方》

 「段取り力」の具体的な鍛え方について、参考にしたい3つの方法をあげておきます。

 (1)裏段取りを意識する
 (2)メイキングビデオは段取り力トレーニングに最適
 (3)倍率を変えるように、物の見方を変えてみる


【読書後の感想ひとこと】

 エピローグでは、会社経営とスポーツ体験には関連性があると書かれています。生死を懸けた山登りというスポーツには、高度な段取りが要求されるため、多くの経営者のバックボーンになっているのだろうということです。

 また、人にものごとを教える時に、相手のやる気を引き出すのにも“段取り”は有用であるとも書かれていました。何からやっていいのか分からない人にとって、きっかけを与えるために、“段取り”を教えるのはいいことだと思いました。

 本書は、2006年に文庫になったようです。“段取り”の大切さ・必要性が分かる良い本でした。よろしければ読んでみてください。

 ◆ 斎藤 孝 段取り力―「うまくいく人」はここがちがう 2006


【関連記事】

●大橋 悦夫,佐々木 正悟 スピードハックス
 手強い仕事に手をつける“段取り”について記事にしています。

●本田 直之 レバレッジ・シンキング
 ノウハウを学ぶ重要性について記事にしています。

●築山 節 脳が冴える15の習慣
 集中力を高める準備法を記事にしています。

●伊藤 守 ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ
 イメージは記憶できないからこそ、描く必要があることを記事にしています。


【参考書籍】

*1.本田 直之 レバレッジ・シンキング 無限大の成果を生み出す4つの自己投資術 2007
 仕事の仕組み化の効用について言及されています。

*2.勝間 和代 効率が10倍アップする新・知的生産術—自分をグーグル化する方法 2007 
 ベスト・プラックティスについて書かれています。

*3.鎌田 浩毅 ラクして成果が上がる理系的仕事術 2006
 効率的な文章の構成法について書かれています。

【読みたくなった本】

  ■ソニーマガジンズビジネスブック編集部 稲盛和夫の「仕事学」―「1年後の自分」を確実に大きくする言葉 2002

  ■安藤 忠雄 連戦連敗 2001


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