2008年6月19日木曜日

74: 効果10倍の“教える”技術


効果10倍の“教える”技術―授業から企業研修まで

吉田 新一郎

2006

 今日は、吉田 新一郎さんの教える技術について書かれた本をご紹介します。最近、講義をする機会が増えてきたので、実りある学びの場を提供できるようになるために、読むことにしました。

 はじめには、「人間は習慣の奴隷」ということについて書かれています。たとえば、風邪を引いた時には、「うがいをして、咳が出る時はマスクをする」と言われますが、これはインフルエンザの時の対処法なのだそうで、風邪の対処法としては間違っているそうです。(ちなみに、「手を洗い、目鼻に触れない」が正しい対処法です。)これと同じことが、講義や研修でも起きていると、吉田さんは述べられています。

 本書の目的は、これまでの講義や研修における“悪い習慣”に着目して、より正しい教え方・学び方のポイントを提供することにあるそうです。

【目次】

プロローグ 私の「教え方」史
第1章 間違った習慣からの脱出
第2章 よりよい「学び」をつくるための5つのポイント
第3章 「学び」のサイクル
第4章 仕事や生活に活かす
第5章 「学び」をサポートするためにすべきこと
資料編
おわりに


【注目の3ポイント】

《1.これまでの間違った教え方の習慣とは?》

 現在、日本で行なわれている主流の教え方・学び方は、「工場モデル」という産業革命とほぼ同時期に生まれたものだそうです。その特徴は、標準化・外部コントロール・アメとムチ的アプローチ・細分化された断片的知識の講義などです。このような「工場モデル」には、「まじめ・暗い・退屈・閉鎖的・競争的・受動的」という印象があります。

 また本来、学びの主役は、一人ひとりの生徒であり、受講者です。教師や講師ではあり得ません。この関係が、逆転していることも吉田さんは指摘しています。

 さらに、講義を聴くだけでは、記憶に定着しないことについて、二千五百年前に老子の言葉を引用しながら説明されています。

 聞いたことは、忘れる。見たことは、覚える。やったことは、わかる。

 定量的な研究もあるそうで、見聞きしたことは2割程度しか、記憶に残らないそうです。口頭のみの講義がいかに非効率的なのかがよく分かります。

 これらの問題点に基づいて、これまでの方法を改善するためには、どうしたらいいでしょうか?私は、学ぶ側が体験しながら、楽しく、主体的に学べる場を提供することが必要があると考えました。本書には、具体的な改善のポイントを5つにまとめて解説があります。

《2.「学び」に実践してもらうためには?》

 見聞きしただけでは、大半が記憶からなくなると書きました。では、どうすれば記憶に保持されるようになるのでしょうか?それは、自分で体験したり、人に教えたりすることによって、飛躍的に記憶に残るようになるそうです。(定量的には80-90%記憶に保持されるようになるそうです)

 したがって、講義の最終目的が、学び手に講義内容を理解してもらい応用してもらうことであるならば、いかに“学び”を実践してもらうかについても考える必要がありますね。

 本書には具体的な方法があげられています。3つピックアップしておきます。

  ・Eメールによるニュースレター・メーリングリスト
  ・講師によるフィードバック
  ・参加者相互のピア・コーチング

 特に、Eメールを使ったメーリングリストは、「参加者同士が相互に情報交換したり、励まし合うこと」ところが良いそうです。使ってみます。
 
《3.「学び」をサポートするためには?》

 受講者の主体的な学びを作り出すために、本当に大切だと思った3つのポイントをあげておきます。

  1. 問いかけを基調にした教え方
  2. 思考力を養う教え方
  3. より良い人間関係を作るスキル

 (1)では、疑問点を洗い出して、答えを見つけさせるということです。思考を刺激するような「良い質問」を投げかけるのが良いそうです。

 (2)では、創造力を養うための「末広がりな質問」を考えさせることや、建設的な批判的思考力を養わせることが大切なのだそうです。

 (3)では、「学び」のコミュニティーを作ることを提案されていました。Eメールを使ったメーリングリストもその一つですね。


【読書後の感想ひとこと】

 講義やセミナーをすることがある人には、絶対オススメの一冊です。私は、教科書として何度も読むことになると思います。

 会議の仕方についても、書かれていて、『会議の技法』という本にも解説があるようなので読んでみます。


【関連記事】

● 戸田 昭直 相手がわかるように教える技術
 ものごとを教える準備について、記事にしています。

● 内海 正人 仕事は部下に任せよう!
 仕事を教える時は、本質を伝えることの重要性について、まとめています。

● 中谷 彰宏 昨日と違う自分になる「学習力」
 学びについて記事にしています。今回読んだ本と、相補的になっています。


【読みたくなった本】

  ■ 吉田 新一郎  会議の技法―チームワークがひらく発想の新次元 2000
  ■ トーマス アームストロング 「マルチ能力」が育む子どもの生きる力 2002
  ■ 小坂 敦子 ライティング・ワークショップ―「書く」ことが好きになる教え方・学び方 (シリーズ・ワークショップで学ぶ) 2007
  ■ ジェニ ウィルソン レスリー・ウィング ジャン 「考える力」はこうしてつける 2004
  ■ サイモン・フィッシャー World studies 学びかた・教えかたハンドブック 1991 ISBN: 978-4-8396-0061-7 (4-8396-0061-9)


【今日の折り目】

49折/230ページ 
・・・赤ペンチェックが入ったページ数を示しています。本の興味度を定量化しています。


【満足度】



(指標の目安)
5:とてもおすすめ,何度も読みたい
4:いい本
3:ふつう
2:う〜んちょっと
1:あんまりおすすめできません


【読書カウンター】

★★★★★ ★★★★★ 
★★★★★ ★☆☆☆☆
☆☆☆☆☆

今月は、あと9冊!


【バックリンク】

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